設計段階からのご相談が可能

 チップの『ズレ』、『浮き』、『立ち』の発生原因は、次のようになります。両電極、クリームはんだ溶融時の時間的ズレ①パターン形状の大小②炉の温度設定の問題(熱容量の大小)(均一加熱になっていない)事が問題になります。

 『ズレ』、『浮き』、『立ち』の発生原因は、チップ部品のマウントエ程での『マウント・ズレ』である、という見方もあります。マウントエ程で、チップがパッド部分から大きくズレてマウントされた場合、このような不良を発生させる可能性があります。しかし、普通に約0.1ミリ以下の『マウント・ズレ』を起こしたものが、正しい温度設定をしたリフロー炉で通した場合セルフ・アライメント効果がみられます。

1:基板パターン

リフロー炉

 リフロー炉の中では、小さなパターンは素早く温度が上がり、大きなパターンはなかなか温度が上がりにくい、この温度差をなくしていく方法が、次の対策となります。"チップ両電極のクリームはんだを、同時に溶かすようにすることです。それには技術部門(パターン設計部門)でできる対策と、生産部門でできる対策の二つがあります。

 パターン設計段階では、大きいパターンを小さく合わせる事が必要です。大きなパターンをそのままにしていると、チップの『ズレ』、『浮き』、[立ち]の不良をいつか発生させることになります。基板パターンの大小をなくすという考えで、大きなアースパターン側から桟橋を出すようにパターンを設計し、温度を早く上昇させなければなりません。片側が先にクリームはんだが溶けると、クリームはんだの表面張力で『チップ立ち』等の不良発生となります。小パターンとなると、チップの両端は同時に温度上昇し、クリームはんだは同時に溶け、同時に表面張力が働き、不良発生にならないのです。

※岸本工業では、大きなパターンを持った基板でも、リフロー炉の温度設定を見直し、大小のパターンを同時に溶かす"均一加熱"のノウハウがあります。はんだ付けされるパッド部分だけを熱容量的に小さく、同時にクリームはんだを溶かすように対策しています。

フロー槽

 フローはんだ付けで発生する不良で、圧倒的に多いのは『ブリッジ』です。狭ピッチ部品(IC、コネクタなど)は、端子のピッチ間隔が2.5~3.0ミリで、端子パターンパッド距離は1ミリ以下では、常にブリッジの懸念が生じます。またフロー槽でのはんだ付けは、小さいパターンパッド部分に対して、多量の溶融はんだを押し当てるのですから当然ブリッジになりやすい状況となります。狭ピッチ部品(IC、コネクタなど)をフローはんだ付けする場合、IC、コネクタなど狭ピッチの部品は、一定方向に配置し、行き場のなくなった溶融はんだの行き場(空きパターン)を作ることです。

 基板は高密度化が進み、ブリッジの発生リスクが高まります。対策として端子のパターンパッド間をできるだけ離すようにする方法があります。見かけ上、隣接端子間のパッドを広げるようにするため、レジストパターンでクビレ・パターンにすればブリッジ対策になります。はんだ付けの強度上、横方向のはんだフレットが多少狭くなり強度の心配が生じますが、その分縦方向にパッド面積を多く取り、楕円型にすることにより強度的な心配は、なくなるものと考えられます。

 また、ハンダがつかないトラブルもあります。ミニモールド部品は、表面実装部品(SMD部品)で、SMTリフローはんだ付けで非常に多く使用されているものです。高密度化、小型化が進み、このようなミニモ部品、チップ部品周辺にガス、空気がたまるため、はんだ付かずになります。基板にガス抜き穴を設けたり、素早くはんだを誘導するためのはんだの道を作り、短時間ではんだを誘導させる対策が有効です。

2:基板加工

 クリームはんだ印刷時に用いるメタルマスク穴の該当箇所に異物が付着するとはんだ不足の原因になります。この異物の多くは基板に付着していた基板クズで、基板メーカから持ち込まれた異物になります。基板メーカでの"基板ブレイク、スルホール穴の"ドリル穴作業"などで、発生する基板クズが付着したまま納品され、SMTの生産現場でマスク穴に付着されるものです。このような異物は、逆にはんだ過多が起こり、リフロー炉から出てくると『ブリッジ』不良となったり、ハンダボールの発生が起こります。

3:はんだ材料・加工方法

 予熱ダレを起こしにくいクリームはんだを採用するのもはんだボール対策の効果は大きいです。仕様を決める際にはこの点にご配慮ください。クリームはんだの質によっては、メタルマスク穴の裏側にクリームはんだが回り込み付着し、適正はんだ量でのはんだ付けをしているつもりが、"ギャップ印刷"となり、結果的にはんだ量の増加となり、リフロー後はブリッジ不良になる可能性があります。
また、サイドボールの発生が起こりやすい場合、メタルマスク穴変更が有効な対策になる場合があるため、仕様決定においてクリームはんだの塗布量やメタルマスクの形状を十分に検討する必要があります。

4:チップ部品

 SMTの高密度基板で発生する『はんだボール』は厄介な不良です。後工程の顧客また市場において、このボールが移動しないという保証はなく、もしボールがIC端子間に移動すると基板回路でショート状態になり、製品そのものが市場不良という大きな不良問題となります。従って高密度基板では、この『はんだボール』は皆無にしなければなりません。その発生原因は、基板上で予備加熱ダレを起こすためです。

 角、丸チップの混載基板は角チップだけにサイドボールが発生する事があります。予熱ダレを起こしたクリームはんだは、本加熱の融点(217 ℃)以上になるとパッド上に集まろうとしますが、角チップは集まりきれず、一部切れてチップの横に残されます。ところが、丸チップは断面が円形のため、阻害する邪魔者はなく、ダレたクリームはんだは切れずに、全部パッド上に集まり、サイドボールの発生が生じません。